肉体労働、頭脳労働の他に、感情労働という言葉があります。感情労働とは、職務として表情や声、態度で適正な感情を演出することを求められる仕事のことを言います。現在の日本では3分の2以上の労働者が感情労働に携わっていると言われています。
1970~80年当時ですが、感情労働の提唱者であるホックシールドがには多くの感情労働が含まれる仕事として、
教員、看護師、ソーシャルワーカー、教育カウンセラー、レジ係、受付係、秘書、飲食店員、保育労働者、美容師等
を挙げています。
中でも「対人援助職」と呼ばれるような医療、や福祉、教育に関わる職種は典型的な感情労働に含まれ、現在のデータの上でも感情労働の程度が強いことが示されています。また職業ではなくても家族の介護や看病、育児なども程度が強いと言われています。
感情的なことはちょっと厄介です。人によっての差異が大きいこともありますが、「仕事だから…」といって後回しにされることが多いからです。しかし、感情労働は大きなエネルギーを必要とし、肉体的な負担とは別の大変さが存在します。
例えば、家族の事を含め、対人援助の場面においては、嬉しい、楽しいといったポジティブな感情だけが溢れているわけではありません。それとは対照的に不安や恐怖、苦痛や不快、悲嘆や怒り、絶望感や無力感といったネガティブな感情が渦巻いているのが現実です。
しかし対人援助の場面では「共感」の大切さが強調され、共感を求められます。ともすれば共感が目的になっているなぁと感じる事も間々あります。確かに「共感」にはケアに対して大きな力がありますが、深い共感=全てOKという事ではありません。その代償も大きいことを知っておく必要があります。
その代償の一つとして言われているのが「共感疲労」です。過度な共感によって、自分の心が疲弊し鬱や睡眠障害、過覚醒、イライラ、混乱、心身の不調などの症状を引き起こしたり、バーンアウト(燃え尽き症候群)の大きな原因となり、場合によっては退職や転職といった事に繋がっていくのです。
組織としてもこれは大きな問題です。職員がすぐ辞めてしまったり、組織内でのひずみが生まれる大きな要因となるからです。
実はこうした感情に対して上手な手綱さばきができるようにアプローチを行う事、またそれだけでなく、疲弊した心を自分の力で回復する力を養うことは意外とシンプルな方法で可能です。
その2では、その方法や、視点について書いていこうと思います。
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