2018年9月6日木曜日

ケアする側の人の感情労働(その2)

その1では感情労働について書きました。
https://ichiokamegumi.blogspot.com/2018/09/blog-post.html

さて、こうした感情労働の場面では、まずは湧き出てくる感情を押し殺し、表向きの印象を操作するような「表層演技」にはじまり、自分の感じ方そのものを変えようとする域にまで達する「深層演技」と言われる段階に入ると言われています。

こうしたことを続けているとアレキシサイミア(失感情・失言語化)という特徴が顕著に表れていきます。これは感情がなくなるというのではなく、自分の感情が分からない、自分の感情を表現できない状態です。

こうした症状が出る場合、同時に、失体感(自分の肉体中に生じてきている諸変化に対する気づきが鈍いか、全く気づけない)、過剰適応(自分のことよりも外部に生じる事柄に心を奪われている)という特徴もみられます。

ではどうすればいいのでしょうか?

直接的に心にアプローチをかける方法もありますが、最初から心にアプローチをかけることは、実際はあまり得策ではありません。そうでなくても心の事は抽象的で分かりづらいものです。自分の感情や思考が分からない状態になっている人に対して心からアプローチしても混乱を生みだすだけですし、準備ができていない状態で向き合うと、単に傷ついたり、辛さが増加したり、新たな問題を生みだしたりしてしまうからです。そこで注目すべきは具体的に捉えることができる身体性です。

私たちは心の動き(感情・思考)は自然と湧いてくると思いがちですが、実際は違います。必ずそこには必ず身体性が関わってきます。例えば暗闇で怖いという感情が沸く場合。暗さを視覚でキャッチした後に怖いという感情が沸くのです。(実際は視覚と感情の間にも色々ありますが、ここでは割愛します)言い換えれば、身体を差し置いて感情に向き合うことはできないのです。

また、脳の中には「偏桃体」と呼ばれる箇所がありますが、この部分が私たちの感情を司っていると言われています。この部分の機能が低下したり、もしくは働きすぎても様々な問題が生じると言われています。まさに、これは身体としての機能です。ちなみに、二昔くらい前は成人すると脳細胞は減っていくと言われていましたが、現在は脳神経の可塑性が証明されています。つまり、きちんとしたアプローチをかけることで調和された状態にすることができるという事です。

つまり身体にアプローチをかけるということは、身体的な機能を高めるという側面と、もう一つ心へ働きかける側面があるという事です。

では最初にどんなことをすればよいのでしょうか?

まずは、身体感覚を取り戻すことです。実はこれだけでも十分なくらい効果はあります。動きは非常に簡単な動きでかまいません。

例えば、呼吸を使った例です。
まずは、今の自分の呼吸を感じます。座っていても、立っていても、寝転がっていてもOKです。そして深い呼吸をしようとかもしなくていいです。どんな時でも休むことなく動いてくれている呼吸を感じます。感じようとすると呼吸がしにくく感じる場合、しにくい感じに気づきます。特にその原因を求めなくても良いです。

ただ感じ、ただ気づく。

次に自分の手のひらで感じていきます。お腹、胸、腰、背中、胸の横、脇腹。すごく動きが分かる部分もあれば、分からない部分もあります。分からないことを責めたり、嫌がらなくても大丈夫。なぜなら分からないも一つの感覚だからです。

最後は、手を離して呼吸に伴う身体の動きを捉えていきます。手を当てていた時との違いはあるでしょうか?もちろんあってもOKです。

普段、何気なくしている呼吸もこうして少し意識を向けてみると様々な事に気づきます。最初は身体感覚から、続けていると自然とその時の自分の心の動きも見えてくるようになります。

この一連の流れは1分あれば充分できますし、呼吸であればいつでも、どこでもできます。ポイントは毎日続けることです。私のおすすめは朝起きた時ですが、毎日どのタイミングでも良いので1分続けてみてください。必ず変わってきますよ♪

その3では、もう一つのポイントCompassionについて触れていきます。


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