2018年6月8日金曜日

なぜケアする側にもヨーガが有効なのか?

なぜ、ケアする側の人に対して、ヨーガが有効なんでしょうか?
健康になるから?ストレス発散ができるから?
そういったこともありますが、これはもうちょっと深いお話です。

セラピスト、看護師をはじめとする医療従事者、援助業務などケアする側が陥る強いストレスの背景には、クライアントさんや患者さんへ向ける、共感など情緒的な心の動きも負荷の一旦となっていると言われています。

ケアを必要とされている方の多くは、身体的な苦痛だけでなく、様々な喪失体験などを経験し、心身レベル、社会レベルにおいて、苦痛や悩みを抱えていたり、レベルの差はあれど危機的状況に陥っている方々です。中には事件や事故、災害の被害者の方というケースもあります。

こうしたケアに関わる中で、苦痛や苦悩を抱えたクライアントさんに対する共感そのものによって、ケアする側が心理的疲労状態になったり、クライアントさんの体験を自分のことの様に感じたりして、何もできない疲労感に捉われてしまう事が間々あるのです。

これは「共感疲労」と呼ばれるもので、情緒的・感情的な燃え尽きの状態に繋がっていく大きな要因です。実はこの「共感疲労」はケアの代償、対人援助職の落とし穴とも言われ、昨今、問題に上がることが増えてきました。

こうした職種に就かれる方の特徴として、思いやりがあり、奉仕精神に溢れている方が多い傾向があると言われますが、多かれ少なかれ、何かしたい、何か役に立ちたいという思いがあるものです。こうした思いが必要な事は間違いないのですが、どのように働かせるか、ここが落とし穴というわけです。また、何もできないという状況に対して働く、無力感や罪悪感が強く影響しているとも言われています。

では、ケアする側が「共感疲労」に陥らずケアや支援を続けるにはどうしたらよいのでしょうか?

言い換えればケアする側のメンタルヘルスと、ケアを必要としている方のバランスをどのように取ればいいのでしょうか? ケアする側が自分を大切にしながら、ケアを必要とする方に寄り添うことは可能なのでしょうか?

これらの問いの一つのカギとしてヨーガの実践を挙げることができます。

「共感疲労」と「真の共感」。似て非なるこの二つ、どこにその分れ道があるのでしょうか?

それは「自己覚知」の程度と言われています。つまりどれくらい「自分に気づいているか」ということです。この辺はヨーガの得意とするところです。ヨーガの実践では身体の反応、感情、思考の流れを「そのままに」判断せず、体験し、自分に気づいていくからです。

身体の反応(呼吸を含む)を使うところがポイントです。なぜなら心の反応は身体に必ず現れます。ところが心の反応を掴むより、身体の反応を掴む方が判りやすいからです。このように、ヨーガの実践は心身の反応を注意深く、微細に「今この次元」で気付くことができるようになります。そして、それらの心身におこる様々な反応に判断を加えず、平静な心と自分を大切にする態度を育てていくのです。

こうした態度はクライアントさんとの関わりにおいても充分に役立てることができます。呼吸や身体の反応で、今の共感具合やクライアントさんへ向ける感情に早く気づけ、それらに対して鋭敏(過敏とは違います)でいられるようになります。また、たとえ今の自分にできる事が無かったとしても、「今ここにある自分」を受け入れることが容易になります。

さらに否定的な感情が緩和され、自然な思いやりや共感をクライアントさんへ向けることが可能になります。それによって、クライアントさんの安心感へつながり、信頼しあえる関係となっていくのです。響きあいながらも、私はクライアントさんではないという自覚が生まれ、自分とクライアントさんとの区別を持ちつつバランスが取れる、しなやかな心が育まれていくのです。

それこそが自分を大切にする大きな第一歩であり、自分を大切にできる在り様が、結果的にはクライアントさんを大切にする思い、「真の共感」を育み育てていく土壌となるのです。

ケアする人が健やかであることは、質の高いケアを行うためには必須です。自分を大切にする術が必要としている人に届くと嬉しいな~なんて思う今日この頃です。


ケアする側の人のためのヨーガセラピー

【受付中です】6/14(木)・6/28(木)13:30~14:45



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